小さな事業者の商品(サービス)開発の全ステップ(手順)

①商品開発のメリット/デメリット
そもそも、商品開発はなぜ必要なのでしょうか。以下のメリットデメリットを確認しながら、そのあたりの必要性を今一度検討してみましょう。
・商品開発の一連の過程で自らの事業を見つめ直すことが可能であり、自社の存在価値が理解できる。
・近未来の「稼ぎ頭」を生み出す可能性がある。
・生み出した商品がヒットするとは限らないため、商品開発に費やした時間や資金がムダになる可能性がある。
・既存事業のイメージと逸脱する商品が開発された場合、稀に既存事業の「良いイメージ」が毀損する可能性がある。
・新商品を拡販するにあたって、相応の販売促進費が必要になる。

②商品開発を「実施すべき事業者」
・新商品開発が必要な事業者:既存のお客様等から「このような商品(サービス)を作ってほしい」「このような商品(サービス)があったらうれしい」といった確かなニーズが認識できる場合
・新商品開発が不要な事業者:既存のお客様から「このような商品(サービス)を作ってほしい」「このような商品(サービス)があったらうれしい」といった確かなニーズが存在しない場合。あるいは既存の商品(サービス)が「もっとこうなるとうれしい」といった改善や改良のニーズがある場合

③商品開発のプロセス
それでは、商品開発の順序(プロセス)を紹介します。
(1)顧客ニーズや市場の動向をを確認する。
(2)競合の状況を確認する。
(3)競合や顧客ニーズ等を踏まえ、「あったら良いな!」のアイデアを出す。
(4)商品やサービスとして「あったら良いな!」を形にする。
(5)市場でテスト販売してみる
(6)テスト販売の結果を踏まえ、発売しようとする商品やサービスを改善する。
(7)発売する。

④商品開発のステップ(1)顧客ニーズや市場の動向をを確認する
まずは顧客ニーズを把握します。進め方は簡単です。まずは日々接しているお客様から、どのような意見や要望があるのかを整理するのです。例えば神奈川県△△市の某飲食店(居酒屋)の実際の話で説明します。
顧客ニーズを考える場合、まずは現状を整理することが参考になります。そこで売上構成比や客層を見ていきます。整理した結果をグラフにしてみると下図のようになりました。つまり、お酒、宴会、高齢者の3つのニーズを深掘りしなければならないことが理解できます。
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 その上で、日常の運営で実際にお客様が発する言葉に耳を傾けて整理していきます。具体的にはどのような要望が多かったかの視点で集約していくことになります。方法は、忘れないように「要望を都度、メモをとる」ことです。この飲食店の場合は、要望が多かった順に並べると次のようになりました。
≪お客様から頻繁に聞かれる発言≫
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つまり、これらの要望がお客様からの「ニーズ」だと考えることができるようになります。
次に市場の動向の確認です。市場の動向の確認とは、既述のお店の現状や、お客様からの実際の声が、「市場と乖離していないか?」「市場は追い風なのか?向かい風なのか?」を確認する作業になります。方法は簡単で、同社の場合、飲食店を取り巻く環境、顧客ニーズで把握した事象等に関わる2次データを「インターネットの検索機能」を使って、調べて整理していきます。この飲食店の場合は次のように整理していきました。

→地域の高齢化の進展はどのような感じなのか?
立地する△△市の総人口は2015年をピークに減少傾向であることがわかりました。年齢層別の推移を見ていくと、高齢化の進展が著しいことがわかります。
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(解釈)
同飲食店は個人経営のため、資金も情報も乏しいです。つまり、常々トレンドを追いかけた若年層向けのお店作りは当店の主旨に合わないと、考えています。そこで客層の多くを占める「高齢者の方々」が居心地良い店創りに精進することが、同店の成長のカギだと実感することとなります。つまり、自店の顧客ニーズと市場の動向に乖離は見られないことを確認したのです。

→外食市場の国内の動向はどんな感じなのか?
 全国的な外食市場の推移の2次データは数多く存在しますが、例えば下記は、公益財団法人 食の安全安心財団から引用したものです。全国的に人口減少局面を迎えるにあたって、近年「外食産業は微増」で推移しています。
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(解釈)
全国的に人口減少局面を迎えるにあたって、近年「外食産業は微増」で推移している実態は、同店のような「個店」においても、「経営努力において、なんとか顧客の確保が出来るのではないか」とポジティブに捉えることとしました。

→居酒屋の国内の動向はどんな感じなのか?
居酒屋の全国的な市場推移を確認するために、日本フードサービス協会の2次データを引用しました。2017年は2016年に比べ、多くの飲食業態が前年比を上回る中、居酒屋は売上、店舗数、客数が前年を下回っており、苦戦傾向が垣間見えます。
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(解釈)
外食全体が微増傾向の中にあって居酒屋業態は苦戦していることが理解できました。同店としては、以上のような傾向に左右されることなく、個店としての魅力を高め、既存顧客の来店頻度の向上を目指し、頑張っていく意志を固める題材としました。

→地域の高齢化が居酒屋や外食市場にあたえる動向
 地域の外食や居酒屋の市場動向を確認するために、最新の全国消費実態調査(総務省・H26)から神奈川県△△市の外食を抜き出してみました。これは1世帯(2人)の1ケ月あたりの平均の外食に費やす消費支出額の推移を表したもので、世帯あたりの外食(居酒屋含む)支出は長期的には減少していることがわかります。無題8.jpg

(解釈)
△△市では、2015年(平成27年)をピークに人口は減少(世帯も同様)しており、△△市の外食市場規模(算出方法:1世帯あたり平均外食支出額×世帯数)の実情は、減少傾向が今後も続いていくだろうとの予測が成り立ちます。
 同店としては、今後の人口減少局面において、既存顧客(高齢者)の囲い込み(来店頻度の向上)が最重要だと認識することとしました。そこでこれらのデータを材料とすることで、新商品開発や新サービスの開発を探ることとしました。

⑤商品開発のステップ(2)競合の状況を確認する
 競合の状況を確認するとは具体的に以下のようなことです。
・競合と思うところを「すべて」挙げて、これらの事業者の主力商品やサービスを研究することです。もし同じような商品やサービスを開発することになる場合は、これら競合の事業者よりも「より高機能」で「よりデザイン性」が高いものを生み出す努力が必要になります。高機能とは、お客様にとって「利便性が高いと感じられる要素を商品(サービス)の仕様に取り入れること」です。デザイン性とは、お客様にとって「商品(サービス)の魅力が伝わる色調やコピー、文言、荷姿や量目」を指します。

 例)高機能:高齢者向けのランチメニューを開発する場合、咀嚼が困難な方に目を向け(競合が実施していないから)、咀嚼が困難な方でも食べられるように配慮する等です。競合より柔らかく、食べやすくすることが商品開発のポイントになります。
 例)デザイン性:高齢者向けの袋入りパンを開発する場合、「咀嚼が困難な方でも食べられるように配慮」したことを、高齢者の方が一目瞭然で理解できるパッケージデザイン(コピーや説明文の記載等)にしなければなりません。また、高齢者が手に取って恥ずかしくないようなパッケージの色調等を研究します。

・競合が目指そうとしていることを推察します。可能な限り、競合と同じことを考えたくないものです。競合と異なれば、自社の新商品や新サービスが日の目を見る可能性(俗にいうところの差別化)が高まるからです。

例)競合が低価格の居酒屋の場合、自社はどこを目指せば良いのか?
  競合が実施していない隙間を見つける。例えば、野菜中心の料理で高価格は競合が実施していない。
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⑥商品開発のステップ(3)「あったら良いな!」のアイデアを出す
 これまでのステップを踏まえ、「誰に」対して「何」を「どのように」提供したいのかを検討していきます。例えば先に紹介した飲食店(居酒屋)の場合、次のように考えることができます。
誰に:高齢者の方々に(既存顧客に高齢者が多いから)
何を:ランチを(実際のお客様の声からランチの要望が多いから)
どのように:咀嚼が困難な方でも食べられるように(高齢者の方々に長くお店を愛用してほしいから。高齢者の加齢とともに、多くの方々の食事上の課題と認識できるから)

 このように整理したら、次はアイデアを出す段階です。「どんな商品なら喜んでくれるだろうか」、「どのようなサービスならお客様が満足するだろうか」、このあたりをイメージしながら、1人でも多くの方を巻き込んでアイデアと出し合いましょう。アイデアを出す場合はオズボーンのチェックリスト等のツールで検討して見るとアイデアが出やすいです。
 例)縮小
現状、若年層向けには、お肉やジャガイモ等の具が大きいカレーが人気だが、高齢者向けには、具を細かく賽の目に切り、長時間煮込んで、具が小さくて口どけが良いカレーなら喜ばれるのではないか?

⑦商品開発のステップ(4)「あったら良いな!」を形にする
 先のステップでアイデア出しをしたら、今度はそれを具体的に形にしていく段階です。狭義的には、この段階を商品開発と言います。例えば「具を細かく賽の目に切り、長時間煮込んで、具が小さくて口どけが良いカレーなら、高齢者に喜ばれるのではないか?」と考えた場合、実際に何度も試作し、「口どけが良くなったのか?」を確認しながら形にしていきます。確認の際には親戚や友人、常連客の方々の意見を聞きながら進めていくと「精度の高い」商品化が可能です。サービスの場合は、サービス提供プロセスを実際に構築していき、親戚や友人、常連客の方々の意見を聞きながら進めていくと良いでしょう。
この過程で「意見を聞きながら」とありますが、都度聞く必要はありません。商品開発やサービス開発のスピードが鈍化してしまいます。そこで「これぐらいで良いのでは無いか?」「これで良いのでは?」といった実感が生まれたところで、体験してもらい、意見を聞くようにします。
 「あったら良いな!」を形にする過程では、主に以下の点に留意して進める事をおすすめします。
・品質が一定になるように
例えば、ある時は「しっとりした食感のビスケット」ある時は「固い食感のビスケッ
ト」では、「これ大丈夫?」というように、お客様に不安を感じさせてしまいます。サ
ービスにおいても、ある時は「丁寧に」ある時は「雑に」ではお客様は不安を感じる
でしょう。
・1度に多くのお客様に提供できるように
新商品開発や新サービス開発の目的の1つは「売上を向上させる」ことにあります。
従って、ヒットしないまでも、たくさん売れるようになることが大切です。そうなっ
たときに困らない準備をしておく必要があります。例えば、飲食店等の場合、ご家庭
で扱っているレシピでは不十分です。このレシピは「少量での製造」に適したもので
す。それを一気に100個~数千個製造するようだと、微妙に風味が変わるものです。
スープ等では、仕込む量が多くなると火の通りが遅く、ご家庭の小鍋で設定していた
野菜の切りサイズや煮込み時間では不十分かもしれません。つまり、量を多く仕込む
視点でのレシピ開発が必要になります。

⑧商品開発のステップ(5)市場でテスト販売してみる
 これまでのステップで「あったら良いな!」が形になったら、試験的に少量を販売してみましょう。商品なら数点から数十点程度、サービスなら数件程度で充分です。実際にお客様に体験いただき、感想や使い勝手、満足度等をヒアリング等で確認していきます。
 「もう少しこうなれば良いのに・・」「この点が素晴らしい・・」等、良い点悪い点を意図的に聞き出すようにしましょう。

⑨商品開発のステップ(6)テスト販売の結果を踏まえ商品やサービスを改善する
 前項で「もう少しこうなれば良いのに・・」といった意見が多い場合は、まだまだ改善の余地があるということです。諦めずに何度でも、そのような悪い点の意見が無くなるまで改良と改善を重ねることが大切です。気を焦って発売してしまうのは、後で売れ行きに影響するばかりでなく、無駄なクレーム対応等が発生してしまいます。

⑩商品開発のステップ(7)発売する
先に記載の「この点が素晴らしい・・」等の良い点の意見を参考にして、これをキャッチコピーに活用するなど、様々なツールを活用して、商品やサービスを拡散するように販売していきます。

キーワード:製造業,飲食店,販売促進,商品開発,集客,食品,広告宣伝,久保正英,中小企業診断士,


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